石油と備蓄のしくみを調べよう調べ学習・自由研究ガイド
石油は「燃やして使う」だけではありません。身のまわりの製品の原料にもなっています。日本はその石油のほとんどを海外から運んでいるので、もしもに備えて石油をためています。しくみを知って、自分の問いを立ててみましょう。
1石油の2つの使い道
地下からくみ上げた石油を「原油」といいます。原油はそのままでは使えません。製油所で熱して、成分ごとに分けます。
分けたものの使い道は、大きく2つあります。
燃料として使う
ガソリン・灯油・軽油など。車を動かしたり、部屋を暖めたりします。
原料として使う
「ナフサ」という成分から、プラスチック、合成繊維、合成ゴム、塗料などが作られます。
「石油=ガソリン」だけではありません。ナフサの値段が上がると、食品の包装から日用品まで、幅広い商品の値段に影響します。
2日本の石油はどこから来るか
日本は、原油の99%超を海外から輸入しています。2024年は、その約95%(95.1%)が中東の国ぐにからでした。
中東からの船の多くは「ホルムズ海峡」という、せまい海の出口を通ります。ここが通れなくなると、日本に届く石油は大きく減ってしまいます。
原油は大型のタンカーで運びます。大型タンカー1隻に積める量は約30万kL。日本が1日に使う量(約28万kL)とほぼ同じです。
コラム産油国なのに、なんで? アメリカとサウジアラビアをくらべる
「石油が採れる国は、原油が値上がりしても困らない」。そう思いませんか。実は、国によって違います。アメリカは困り、サウジアラビアは得をしやすい側です。なんでなんだ?を確かめてみましょう。
アメリカは困る。なんで?
アメリカは石油の生産量が世界1位の国です。それでも原油の値段が上がると、ガソリンが値上がりして暮らしに響きます。
1. 原油の値段は、世界全体で決まる
原油は世界中で売り買いされていて、値段は世界全体の「ほしい量」と「売りたい量」のつり合いで決まります。アメリカの石油会社も世界の値段で売るので、国内で採れても安くはなりません。
2. 産油国でも、原油を輸入している
アメリカは、ガソリンなどの製品を含めた石油全体では輸出のほうが多い国です。でも原油だけを見ると、2023年は輸入が1日あたり約648万バレル、輸出が約406万バレルで、輸入のほうが多くなっています。国内の製油所の多くが「重くて硫黄の多い原油」向けに造られていて、国内で多く採れる「軽くて硫黄の少ない原油」とは種類が合わないためです。
3. ガソリンの値段の約半分は、原油の値段
アメリカのガソリンの小売価格では、原油の費用がいちばん大きく、およそ半分を占めます。原油が上がれば、ガソリンも上がります。2022年には、レギュラーガソリンの全米平均が6月に1ガロン(約3.8L)5.01ドルまで上がりました。
サウジアラビアは得をしやすい側。なんで?
サウジアラビアも大きな産油国ですが、原油が値上がりしたときの立場はアメリカと逆です。
1. 採れた石油の多くを輸出している
サウジアラビアの石油の生産量は1日あたり約1,113万バレル(2023年)、消費量は約365万バレル(2022年)。使う量の約3倍を生産していて、多くを外国に売っています。アメリカは約1.1倍で、生産する量と使う量がほぼ同じです。
2. 国の収入の約6割が石油
2024年は、国の収入の約60%が石油によるものでした。原油が値上がりすると、国の収入が増えます。
3. ガソリンの値段に上限がある
2021年7月から、ガソリンの値段に上限が決められています(91オクタンのガソリンで1L 2.18リヤル)。上限を超える分は国が負担するので、原油が値上がりしても国内のガソリンは上がりにくくなっています。2026年10月の時点でも同じ値段です。
サウジアラビアの弱点:原油が安くなると、国の収入が減ります。国際通貨基金(IMF)の2024年11月時点のデータでは、国の予算の収支が合う原油の値段は2023年に1バレル約95ドルでした。また、値段が高くても、輸出のルートが止まれば売ることができません。2026年はホルムズ海峡の通航に支障が出て輸出の量が減りましたが、IMFは2026年7月に、値上がりが量の減少を上回って石油の収入は増えたと発表しました。それでも国の財政は赤字の見通しです。
日本は?:アメリカは「たくさん使う国」、サウジアラビアは「たくさん売る国」です。日本は原油の99%超を輸入する「買う国」なので、値上がりの影響をそのまま受けます。
考えてみよう:同じ産油国でも立場が分かれるのはなぜだろう。「自分の国で使う量」と「外国に売る量」に注目して、アメリカ・サウジアラビア・日本をくらべてみよう。
出典(英語のページ)
- 米国エネルギー情報局(EIA)「Oil prices and outlook」(原油価格は世界の需給で決まる)(外部サイト・別タブで開きます)
- EIA「What countries are the top producers and consumers of oil?」(各国の生産量・消費量)(外部サイト・別タブで開きます)
- EIA「How much petroleum does the United States import and export?」(米国の輸出入)(外部サイト・別タブで開きます)
- EIA「Oil imports and exports」(米国は2020年に純輸出国に)(外部サイト・別タブで開きます)
- EIA「U.S. crude oil exports reached a record high in first half of 2023」(製油所と原油の種類)(外部サイト・別タブで開きます)
- EIA「Factors affecting gasoline prices」(米国のガソリン価格の内訳)(外部サイト・別タブで開きます)
- EIA「U.S. retail gasoline prices rose in summer but ended 2022 lower than start of 2022」(2022年の価格)(外部サイト・別タブで開きます)
- Arab News 2025年2月13日「Saudi Arabia’s revenue rises to $336bn in 2024」(政府の収入に占める石油)(外部サイト・別タブで開きます)
- Argus 2021年7月11日「Saudi caps gasoline prices as domestic demand struggles」(ガソリンの上限価格)(外部サイト・別タブで開きます)
- Asharq Al-Awsat 2021年7月11日「Saudi Arabia Sets Price Cap on Gasoline Prices in July」(上限を超える分は国が負担)(外部サイト・別タブで開きます)
- サウジアラムコ「Retail fuels」(国内の燃料の価格表)(外部サイト・別タブで開きます)
- FRED「Breakeven Fiscal Oil Price for Saudi Arabia」(IMF の地域経済見通しのデータ。2024年11月更新)(外部サイト・別タブで開きます)
- IMF 2026年7月29日「IMF Executive Board Concludes 2026 Article IV Consultation with Saudi Arabia」(2026年の石油収入と財政)(外部サイト・別タブで開きます)
3備蓄のしくみ
石油が届かなくなっても、すぐに暮らしが止まらないように、日本は石油をためています。これを「石油備蓄」といいます。
備蓄には、持ち主のちがう3つの種類があります。
| 国家備蓄 | 国が持っている備蓄。国内の石油備蓄基地などに保管し、国の危機のときに放出します。 | 102 日分 |
|---|---|---|
| 国が持っている備蓄。国内の石油備蓄基地などに保管し、国の危機のときに放出します。 | ||
| 民間備蓄 | 石油会社が、法律で決められた量を持っている在庫。ふだんの流通の調整にも役立ちます。 | 93 日分 |
| 石油会社が、法律で決められた量を持っている在庫。ふだんの流通の調整にも役立ちます。 | ||
| 産油国共同備蓄 | 産油国の石油会社に日本のタンクを貸し、原油を置いてもらうしくみ。供給が減ったときは、日本が優先して受け取る約束です。 | 5 日分 |
| 産油国の石油会社に日本のタンクを貸し、原油を置いてもらうしくみ。供給が減ったときは、日本が優先して受け取る約束です。 | ||
| 合計 | 200 日分 | |
内訳の日数は、それぞれ小数点以下を丸めた値です。そのため、足しても合計と1〜2日ずれることがあります。
国際エネルギー機関(IEA)は、加盟国に90日分の備蓄を持つことを求めています。ただし、IEAの日数は数え方がちがい、上の表の日数より少なめに出ます。そのまま並べて比べることはできません。
トップページのカウンターは、この公表値から、その後に過ぎた日数を引いた「推計」です。そのため、表の合計とは数字がちがいます。カウンターを見る
4数字を身近な大きさに直してみよう
大きすぎる数字は、身近なものに置きかえると実感しやすくなります。式を見て、自分でも計算してみましょう。
1日に使う石油は、お風呂何杯分?
約28万kL = 2.8億L → 2.8億L ÷ 300L
= 約93万杯分
大型タンカー1隻は、何日分?
約30万kL ÷ 約28万kL
= 約1.1日分
備蓄は、ぜんぶで何kL?
200日分 × 約28万kL
= 約5,600万kL
やってみよう:自分の家のお風呂は何Lか調べて、同じ計算をしてみよう。答えはどれくらい変わるかな。
5調べ学習の進め方
1問いを立てる
「なぜ日本は石油を備蓄するのか」「石油が届かなくなったら何が困るか」など、知りたいことを1つ決めます。
2資料を集める
国の発表など、もとになる資料(一次資料)を探します。このサイトの数字は、資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」をもとにしています。
3数字を比べる
備蓄の日数の移り変わりや、3つの種類の割合を、表やグラフにまとめます。
4考えをまとめる
数字からわかったことと、自分の考えを分けて書きます。使った資料の名前と日付(出典)も書きましょう。
問いの例
- 国家備蓄と民間備蓄は、なぜ分けて持っているのだろう。
- 家の中の石油製品を、燃料と原料に分けると、どちらが多いだろう。
- ホルムズ海峡が通れなくなったら、自分の暮らしで最初に困るものは何だろう。
先生・保護者の方へ
このページは「石油のものさし」の内容を、中学生の調べ学習向けに整理したものです。数値は経済産業省 資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」の公表値と、サイト内の換算(1日の消費量 約28万kL、家庭用のお風呂1杯 約300L、大型タンカー1隻 約30万kL)にもとづきます。原油の海外依存度(99.7%)と中東依存度(2024年、95.1%)は、資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2025年度版」の値です。
くわしい換算と備蓄のしくみは石油のものさしをご覧ください。出典:資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」(外部サイト・別タブで開きます)、資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2025年度版」(外部サイト・別タブで開きます)(海外依存度・中東依存度)
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